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京都・与謝野町を「日本一の桜のまち」にする「百商一気」プロジェクト

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日本人と馴染みの深い「桜」。この桜を切り口に「日本一の桜のまち」を目指しているのが、京都府北部に位置する与謝野町です。ちりめんや農業などが盛んなこのまちは、他の多くの地域と同じように、少子高齢化や後継者不足に悩まされています。
そこで地元の商店街が中心となりこの状況を打破しようと百姓一揆ならぬ「百商一気」を起こし、桜に関するさまざまなプロジェクトを進めているそうです。一体どのような取り組みなのでしょうか。

【新型コロナウイルスの感染拡大防止対策にご協力お願いします!】
・基本的な感染予防対策(マスクの着用・手洗い・身体的距離の確保など)を徹底してください。
・屋外の活動も慎重にしてください。
・発熱等の症状(発熱、咳、のどの痛み、息苦しさなどの症状)がある場合は、外出を控えてください。

100の商店と人が一気一丸となって動く「百商一気」

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YOSANO日本一構想桜プロジェクト決起集会の様子(商店街創生センター提供)

人口減による商店の減少に頭を抱えている与謝野町。まちの商店街団体「くすぐるカード会」は、2016年から京都府の支援の下、与謝野町商工会や商店街に興味があるメンバーたちと共にワークショップを立ち上げ、この課題解決に向き合ってきました。

コンセプトづくりを重ねる中で、江戸時代の文政年間に宮津藩の圧政に対して一揆(文政一揆)が起こった歴史に注目。この地域には「現状を変えていこう・よくしていこう」という文化やエネルギーがまだ残っていることから、100以上の商店や人が一気一丸となって動く取り組みを「百商一気」と命名。地域活性化に向けた取り組みが始まりました。

「桜日本一のまち」を目指した取り組み

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百商一気では「子どもたちが自慢できて、帰ってこられる町にしないといけない」「通過される町で終わってはいけない」という課題に対して、日本人に馴染み深い「桜」を切り口に、郷土への愛着の促進や観光客の誘致、商業振興、新規創業、新商品開発を促す「桜プロジェクト」をスタート。

当初は「サイクリングロードを桜の並木道にしたい」という構想がありましたが、サイクリングロードが府道であることや土地の面積が少ないことから現実的に実現は困難だということがわかりました。

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「百商一気」初の取り組みとなる桜の植樹(商店街創生センター提供)

そこでサイクリングロードが町内の桜の名所をつなぐ「幹線道路」になればという、まさに逆転の発想で、町内に桜の植樹をすることに。京都府をはじめ与謝野町や与謝野町商工会、関係各位の支援を受けながら、主旨に賛同する桜オーナー達により、与謝野駅南側に約350本のおかめ桜が植樹されました。

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与謝野町内に植樹されたおかめ桜。2018年から2021年までの4年間に約350本の木が植えられました

おかめ桜は、カンヒザクラとマメザクラを交配した品種で、淡い紅色の一重咲きの花を咲かすのが特徴。ソメイヨシノなどに比べて樹高が低く成長しても3メートル程度という点や根を広く張らないことから、限られたスペースでもたくさんの植樹が可能な植物です。春に早速花を咲かせ、観る人の心を和ませています。

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また、2020年には、与謝野町の桜の名所や観光地、商店など、町の魅力をふんだんに盛り込んだ「百商マップ」を作成。手持ちのスマートフォンやPCからも閲覧できる、現代的なスタイルのマップが完成しました。

(百商マップ:https://m.stroly.com/yosano_hyakushoikki/i#1578446834

食用に適したオオシマザクラを1000本植樹

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約2年の歳月をかけて育てられたオオシマザクラ。桜葉に注目しがちだが、白い花も美しいです

しかし今後は、植樹した桜の管理や町おこしのための活動資金が必要です。そこで、百商一気では、合同会社を設立し桜をさまざまな形で活用するための商品開発に着手。目をつけたのが桜餅などで利用されているオオシマザクラ(大島桜)でした。

2020年の4月に町内の耕作放棄地だった約25アールの農地に、1000本のオオシマザクラの植樹を実施。当初は2023年に収穫を予定していましたが、一部の苗が3メートルを超える程に成長したことから、今年(2022年)5月に収穫を行う見通しが立ったとのこと。今年度は、約50万枚の収穫が予定されています。

また、今年も1000本のオオシマザクラと50本のカンザンザクラ(関山桜)を植樹予定で、このように毎年植樹本数を増やしてゆくと共に、併せて栽培農家を募集するとのことです。

このニュースが2022年1月に京都新聞で紹介されると、京都市内の有名和菓子店や菓子原料店、府外からの問い合わせもたくさん来たとのことで、百商一気代表の小長谷(おばせ)建さんも「想定外の出来事」と驚きを口にします。

「オオシマザクラの国内での生産量は伊豆地方が約4割を占めていますが、国内に流通する桜葉の約7割が中国産。『メイドイン京都・与謝野』という響きもあり、たくさんの問い合わせが来たのかなという実感です」(小長谷さん)

収穫した桜葉は、半年から一年の期間塩漬けを行ったのち、全国に販売する予定とのこと。「オオシマザクラは樹高が低いので、高齢者や障害のある方でも、収穫作業がしやすいのも特徴です。今後、町内の使われていない農地を活用しての遊休耕作地の解消、そして雇用促進を通じて農商工福連係の6次化産業を目指したいですね」

捨てるところはなし!SDGsにもつながるオオシマザクラ

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オオシマザクラの剪定(せんてい)を行う「百商一気」のメンバー

また、オオシマザクラは、桜葉以外にも活用できる点があるそうです。

「昨年12月に、生育したオオシマザクラを地面から50cm程の場所で剪定する「台切り」という作業を行いました。台切り後に芽吹いてくる新たな若葉を収穫するためのものですが、この時に剪定した枝を百商一気のメンバーが桜チップに加工して『道の駅 シルクのまち かや』内にある『よさの野菜の駅』で4月から販売予定です」(小長谷さん)

まさに捨てるところなしといったオオシマザクラは、SDGsの提唱する循環型社会にぴったりの素材なんですね。

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「よさの野菜の駅」で販売予定の桜チップ

今後は、与謝野町特産のばらずしへの活用をはじめ、様々な商品開発にも利用されるオオシマザクラ。「桜日本一のまち」を目指し、着実に階段を上る与謝野町の「百商一気」の取り組みを、KYOTO SIDEでは応援したいと思います。

■■INFORMATION■■
京都よさの百商一気合同会社
京都府与謝野郡与謝野町字下山田134-1
TEL:090-8654-8091

hyakushoikki.com

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