西陣織や絹糸などを用いた京都らしいアクセサリーを展開するハンドメイドブランド「sampai(サンパイ)」。この可愛いアクセサリーに使われている素材は、伝統産業の製造工程で生まれる産廃素材なんです。
今回は産業廃棄物に新たな価値を加え、素材本来の魅力とそこに込められた想いを届けるsampaiの活動をご紹介します。
※記事中の情報・金額はすべて2025年8月時点・税込表記です。
sampaiってどんなブランド?
2021年に誕生した「sampai」は、京都・西陣の伝統産業や手仕事の現場で生まれる産業廃棄物を、アップサイクルして生まれるハンドメイドアクセサリーのブランドです。
「産廃を減らす、想いを紡ぐ」をコンセプトに、実際に地域の事業者を訪ね、廃材となる素材の背景や作り手の想いを理解し、その魅力を最大限に引き出すアクセサリーを生み出しています。
思わずキュンとする可愛さと、日常に取り入れやすいデザインも魅力ですが、sampaiのすごいところは、単に“売れること”をゴールにしていないこと。伝統産業の担い手不足が深刻化するなか、アクセサリーという身近なアイテムを通じて、その歴史や職人の取り組みなどの社会課題を伝えることを目的に、地域事業への興味や大量消費の見直しを考える「きっかけ」作りを重視されているんです。
そのため、商品は対面販売やSNSの発信で“作り手や事業者の想い”とともに届けられるので、普段何気なく手に取る商品についても、その背景や価値を改めて考える機会にもつながります。
想いを紡ぐsampaiの物語
sampaiを立ち上げたのは、地域企業や町おこし等のイベント企画などを手がける「頼 -tano-」代表の宮武愛海さん。
きっかけは、大学生の頃に西陣地域で開催された学生向けビジネスコンテストの運営に携わった経験でした。そこで出会った地域の人々や伝統産業の魅力に触れ、その後も西陣に関わりたいと思うようになったそうです。

画像提供:sampai
西陣織の工房を訪ね、事業者と交流を重ねるなかで、製品が完成するまでに約20もの工程があり、多くの人の手と熟練の技が注がれていることを知りました。さらにその技術の多くはデータ化できず、失われれば二度と再現が難しいものだということも学びます。

画像提供:sampai
そんな貴重な現場で、生地の切れ端や糸くずが廃棄されてしまう現実に直面し、「もったいない」という気持ちと同時に、衰退の危機にある伝統産業や地域を支えていきたいと、宮武さんは考えるようになったそうです。
学生時代に学んだファストファッションやサステナビリティの知識も背景にあり、宮武さんは「アクセサリーという身近なアイテムを通じて、若い世代に伝統工芸の魅力や現状を発信する。そうすることで、商品が多くのコストや手間暇をかけて生産されているということを知ってほしい」という考えのもと、職人の技に新たなデザインを加え、廃材をアップサイクルする「sampai」が誕生しました。
ターゲットは若い世代の中でも、特に小さなお子さんがいるお母さん世代。子どもたちと長い時間を過ごす母親自身が伝統産業について知ることで、家庭での会話を通じて子どもたちにもその存在が伝わります。そうした積み重ねが、次の世代に「伝統産業」を知ってもらうきっかけ作りにつながれば…という狙いもあるそうです。

画像提供:sampai
ブランド名の「sampai」は、「産業廃棄物(産廃)」と、インドネシア語で「〜まで」を意味する言葉を掛け合わせたもの。そこには捨てられるはずだった素材が持つ本来の価値を、消費者の手に届けたいという想いが込められています。
また、「このブランドの主役は職人たち」という意味も込めて、通常ブランドに使用する際に頭文字は大文字を使用するのが通例ですが、あえて小文字で表記されているそうです。
想いを届けるsampaiの活動

画像提供:sampai
sampaiは宮武さんとクリエイターのtuguさんを中心に、インターン生を加えたメンバーでアクセサリーの製作やイベント出展、ワークショップなどの活動をされています。
アクセサリーに使われる産廃素材は、西陣地域の企業と連携して集められた、西陣織の織物や絹糸、レースなどの3種類の端材がメイン。「3種類」と聞くと少なく感じるかもしれませんが、絹糸だけでも10色以上のバリエーションがあり、レースに至っては100種類以上もの端材が存在します。

画像提供:sampai
通常、ハンドメイドアクセサリーはデザインを先行して作られることが多いのですが、sampaiは“産廃素材が主役”。そのため、活動当初は素材を活かすためのデザイン考案に苦労したそうです。
まずは素材にじっくり触れ、その質感や色味をどう表現すれば魅力的に魅せられるかを探りつつ、sampaiのような活動が他の地域にも広がり、「自分たちも出来るかもしれない」と思えるような親しみやすいデザインを心がけて制作されています。

画像提供:sampai
イベントやワークショプで行われている、産廃素材について知ってもらう工夫もsampaiの魅力のひとつ。ものづくりに関心のない方にも興味を持ってもらえるよう、アクセサリーになる前の素材を見てもらいながら、素材を生み出す工程や職人さんの話も交えてわかりやすく説明します。
熱心に耳を傾け、「購入する前に商品の背景に初めて興味をもった」と話すお客さんの姿は印象的だそうで、同じデザインでも素材により表情が違うアクセサリーを楽しそうに選ぶ姿に、作り手の喜びもひときわだそう。

画像提供:sampai
過去のワークショップではアクセサリーや缶バッジ製作のほか、伝統素材の廃材で彩るアートボード作りなどを通じて、捨てられる部分にも価値があり活かせる方法があることを実感しやすい活動を行っています。
伝統を身にまとうsampaiのアクセサリー
日本の伝統産業を知る一歩につながるsampaiのアクセサリー。その商品の一部をご紹介します。
ころんと丸いフォルムが可愛い「hodoku -解-」(3,740円)は、西陣織の製作過程で絡まり切れてしまった絹糸を丁寧に解きほぐし、仕立て直したもの。中が空洞になっているため、動きに合わせて光が抜ける独特の見た目が特徴です。
「color drops」(3,630円/左)は、気分を明るくしてくれそうなポップなカラーと柔らかなレースの質感が魅力。
「Lace flower」(3,630円/右)は、さまざまなレースを重ねた小さな花のようなアクセサリー。カジュアルからフォーマルまで、幅広いシーンにおすすめですよ。
職人が染めた絹糸と金糸を織り交ぜた「絹糸のイヤーカフ」(2,530円)は、光が当たると繊細な煌めきを放ちます。レジン素材のため金属アレルギーの方にも安心。金糸が入っていないバージョンと2種類あります。
「西陣織の髪留め」(3,080円)は、伝統柄をそのまま活かした上質な髪留め。西陣織ならではの上品な光沢は、和装はもちろん、洋装にも自然と溶け込み、日常使いのアクセントにおすすめです。
商品はイベントやECサイトのほか、大阪の「999+1」にて購入できます。また、産廃素材の在庫状況によりアクセサリーの修理にも対応していただけます。ご希望の方はInstagramのDMなどから相談してみてくださいね。
まだまだ続くsampaiの挑戦
産廃素材の背景や職人の想いを届け、伝統産業や大量消費の問題を知るきっかけ作りを目指すsampaiの活動。「私たちにできることは少ないですけど、その分、地域の方々などと連携をとるのが得意です」と宮武さんは笑顔で話してくれました。
今後の展開をお伺いすると、9月に若手パタンナーと就労継続支援B型施設と提携し、婚礼衣装の打掛をアップサイクルしたアパレルブランドを発表されるそう。意欲的に取り組むsampaiの活動に期待が高まります!
また、11月には京都で行われるイベントへの出展が予定されています。詳細については決まり次第、HPやInstagramで告知されるので、ぜひチェックしてくださいね。
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sampai
Instagram:https://www.instagram.com/sampai.store/
問い合わせ:公式HPの問合せ欄、または、tano.co.creation@gmail.com