
画像提供:(左上)退蔵院/(右上)大原野神社/(左下)縁成寺/(右下)アサヒグループ大山崎山荘美術館
6月~8月頃にかけて見頃を迎える「蓮(ハス)」と「睡蓮(スイレン)」。どちらも水上に可憐な花を咲かせ、じめじめとした梅雨時や初夏の頃合いに涼を感じさせてくれます。
今回は京都府内の蓮と睡蓮の観賞スポットをご紹介します。花は午前中の涼しい時間帯に咲き、午後には閉じてしまうので、早朝の清々しい空気とともにおでかけしてみてください。
※記事中の情報はすべて2025年6月時点のものです。
蓮(ハス)と睡蓮(スイレン)ってどう違うの?

画像提供:縁成寺(左:蓮)/退蔵院(右:睡蓮)
蓮と睡蓮はどちらも同じように水辺で花を咲かせ、似たような見た目ですよね。
実は蓮はハス科の挺水(ていすい)植物、睡蓮はスイレン科の浮葉(ふよう)性植物なのでそれぞれ違う植物なんです。
蓮の葉は水面よりも高い位置に伸び、花も水面より上に位置します。そして地下茎には穴があり、いわゆるレンコンになるのがこちら。一方で葉も花も水面に浮かぶように咲くのが睡蓮です。
どちらも花は午前中に咲き、午後には閉じてしまうので、花を楽しみたい方は朝のうちに訪れてみてくださいね。
禅寺で心静かに蓮と睡蓮を観賞
【京都市】退蔵院
見頃:睡蓮 5月下旬〜8月下旬 / 蓮7月上旬~8月上旬

画像提供:退蔵院
妙心寺の塔頭のひとつ「退蔵院」。1404(応永11)年に波多野重通が無因宗因を開山として創建しました。退蔵院では蓮と睡蓮どちらも観賞できますが、蓮は鉢に植えられているので山門前(写真)や方丈前庭などで見られますよ。

画像提供:退蔵院
1965(昭和40)年に中根金作によって造られた池泉回遊式庭園「余香苑(よこうえん)」では、四季折々の花木が。こちらのひょうたん池で白い花の睡蓮が見られます。朝ならではのやわらかい日差しに照らされる睡蓮は風情がありますね。

画像提供:退蔵院
また、ひょうたん池の中には鉢植えの蓮も設置されていますよ。7月中ならどちらの花も同時に見られるかも。ぜひ京都の朝観光とあわせてお参りしてみてください。
■■INFORMATION■■
退蔵院
京都市右京区花園妙心寺町35
TEL:075-463-2855
時間:9:00~17:00
拝観料金:600円
駐車場:あり(無料、8:30~17:30)
HP:http://www.taizoin.com/
モネの名画のような睡蓮が咲く風景
【京都市】大原野神社
見頃:睡蓮 6月頃

画像提供:大原野神社
桓武天皇による長岡京遷都の際、藤原氏の氏神である奈良の春日大社のご祭神を分祀したというご由緒から、「京春日」の別称を持つ大原野神社。奈良の猿沢池を模した「鯉沢池(こいさわのいけ)」では、5月中旬から8月下旬にかけて美しい白い睡蓮の花を見ることができます。

画像提供:大原野神社
鯉沢池にはアーチ状の橋が架かり、橋の下一面に広がる睡蓮の様子はさながらクロード・モネの「睡蓮の池と日本の橋」のよう。池の周りはぐるりと一周できるので、ゆっくりと散策しながら名画のような1カットを探してみてください。
また、鯉沢池を描いた「睡蓮御朱印」(500円)も。お参りの際はぜひ授かりましょう。
■■INFORMATION■■
大原野神社
京都市西京区大原野南春日町1152
TEL:075-331-0014
時間:拝観自由
拝観料金:無料
駐車場:あり(普通車 入庫後20分無料、以後30分200円。3時間最大600円繰り返し)
HP:https://oharano-jinja.jp/
名画・睡蓮とともに楽しむ初夏の芸術
【大山崎町】アサヒグループ大山崎山荘美術館
見頃:睡蓮 6月~8月

画像提供:アサヒグループ大山崎山荘美術館
京都府乙訓郡大山崎町、天王山の南麓にある美しい洋館「大山崎山荘」は、大正から昭和にかけて建てられた実業家・加賀正太郎氏の元別荘です。
企画展はもちろん、建物自体が国の登録有形文化財に指定されているので、レトロな館内を歩くのも楽しみの一つ。
建物について詳しくはこちらの記事をどうぞ▼

画像提供:アサヒグループ大山崎山荘美術館
そして1階の展示室のテラスから見える風景がこちら。一面に睡蓮が浮かび、まるでクロード・モネの《睡蓮》のような景色が広がります。ちなみに《睡蓮》は安藤忠雄氏設計の「地中の宝石箱」(地中館)に展示されています。

画像提供:アサヒグループ大山崎山荘美術館
また、こちらの庭園にも美しい睡蓮池が整備されています。庭は約5,500坪もあり、ゆったりと散策することができます。名画と庭園の2つの睡蓮を堪能してみてはいかがでしょう。
■■INFORMATION■■
アサヒグループ大山崎山荘美術館
乙訓郡大山崎町銭原5-3
TEL:075-957-3123(総合案内)
時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
拝観料金:一般・企画展ごとに異なります 、高・大学生・500円、中学生以下・無料、障がい者手帳、ミライロIDをお持ちの方・300円
休館日 月曜日(祝日の場合は開館、翌火曜日休み)、年末年始。臨時休館あり
※大規模修繕工事のため、7月7日(月)~9月19日(金)まで休館
駐車場:なし※最寄駅近辺のコインパーキング、町営駐輪場をご利用ください。
HP:https://www.asahigroup-oyamazaki.com/
鉢植えの蓮を間近で観賞できる
【宇治市】宇治市植物公園
見頃:睡蓮 6月上旬〜9月中旬 / 蓮6月下旬〜7月中旬

画像提供:宇治市植物公園
京都府立山城総合運動公園の西隣にある「宇治市植物公園」は、春・夏・秋の季節のゾーンに分けられており、蓮や睡蓮は夏のゾーンにある「修景池」と入り口すぐの「緑の館」で見られます。
こちらでは約20品種の睡蓮と約160品種の蓮があり、蓮は別の種と交配しないように鉢植えで展示されています。鉢ごとに名札も付けられているので、間近で花の名前を確認しながらじっくりと観察できますよ。

画像提供:宇治市植物公園
中でも時間の経過とともに花の色が変化する「巨椋の曙(おぐらのあけぼの)」(写真左)や、花弁の多さが印象的な「請所の本紅(うけしょのほんべに)」(写真右)など、昭和初期の干拓で消滅した蓮の名所「巨椋池」由来の品種が81品種・約200鉢も見られます。さらに81品種すべてが2023年に日本植物園協会の「ナショナルコレクション」に再認定された希少品種なんですよ。
また7月12日(土)〜13日(日)7:00〜には観蓮会が行われます。蓮の開花時間に合わせて入園できるので、ぜひ日程を合わせて訪れてみてください。
<周辺立ち寄りスポット>
・京都府立山城総合運動公園
・ボウケンノモリ 太陽が丘店
■■INFORMATION■■
宇治市植物公園
住所:京都府宇治市広野町八軒屋谷25-1
TEL:0774-39-9387
開園時間:9:00〜17:00(16:00受付終了)
入園料:大人600円、小・中学生300円、幼児無料
休園日:月曜(祝日の場合は翌日休園)、12月28日〜1月4日
駐車場:あり(普通400円/大型1500円)
HP:https://uji-citypark.jp/botanical/
夏の早朝散歩で愛でる睡蓮と蓮
【長岡京市】長岡天満宮 八条ヶ池
見頃:睡蓮 6月中旬〜8月中旬 / 蓮 7月中旬

画像提供:長岡京市役所
長岡天満宮境内の東側に広がる「八条ヶ池」は、1638(寛永15)年、桂離宮を造営した八条宮智忠親王によって築造されました。
八条ヶ池の西池は「水生植物園」として整備され、蓮や睡蓮のほか、カキツバタやアヤメなど、さまざまな植物が見られます。睡蓮は例年5月下旬から10月にかけて花が咲き、水面に可憐な姿を映し出します。

画像提供:長岡京市役所
睡蓮よりも少し遅れて7月頃に咲き始める蓮は「西湖紅蓮(さいここうれん)」という品種。丸いフォルムが可愛らしいこの蓮は、長岡京市の友好都市・中国浙江省寧波市から贈られたもので、当初は約150株でしたが、現在では倍の約300株に増えています。
八条ヶ池を彩る睡蓮と蓮のロマンチックな花畑は、早朝が狙い目です。ただし、西池に向かう水上橋の通行は朝7時からとなるので、お気を付けくださいね。
■■INFORMATION■■
長岡天満宮 八条ヶ池
住所:京都府長岡京市天神2丁目地内
TEL:075-955-9515(長岡京市役所商工観光課)
水上橋のゲートの開閉時間:4〜9月は7:00〜18:00
駐車場:境内にコインPあり
檀家さんが管理する蓮池を見学
【京丹後市】縁成寺
見頃: 蓮6月下旬〜8月中旬

画像提供:縁成寺檀家総代・渡利謙太郎
京丹後市にある「縁成寺(えんじょうじ)」は、“橋木の観音さん”として地域の人々に親しまれています。本尊は養老元年(717年)インド高僧の善無畏三蔵が安置したと伝わる国の重要文化財・千手観音立像。
そんな縁成寺の庫裏前にある蓮池では、檀家さんが育てる蓮が見られます。

画像提供:縁成寺檀家総代・渡利謙太郎
蓮池の広さは約400平方メートルあり、花の全盛期である7月には一面に咲く様子が見られますよ。白とピンクの花が咲き乱れる景色は癒されますね♪
また、花が終わる9月頃の花托(かたく:花の中心部のこと。蓮はハチの巣状の形が特徴)が風に揺れる風景もおすすめです。

画像提供:縁成寺檀家総代・渡利謙太郎
境内は山門から本堂手前までの参道を車で進むことができます。蓮池は駐車場からすぐのところにあるので、必ず駐車場に停めてから見学してくださいね。
<周辺立ち寄りスポット>
・道の駅丹後王国「食のみやこ」
■■INFORMATION■■
縁城寺
京丹後市峰山町橋木873
TEL:0772-62-0957
時間:拝観自由
拝観料金:無料※本堂拝観は要予約(9:00~16:00)
駐車場:あり
HP:https://www.facebook.com/hashikidera/?locale=ja_JP
里山の風景を楽しみながら睡蓮&蓮を満喫
【精華町】けいはんな記念公園
見頃:睡蓮 6月下旬 / 蓮7月中旬~下旬

画像提供:けいはんな記念公園
「けいはんな記念公園」の有料エリアである回遊式庭園「水景園」では、長さ123メートルの観月橋や遊歩道から四季折々の景色を楽しむことができます。
水景園内は山城地域の里の風景をイメージして作られており、5月から8月にかけては、棚田状の水盤が広がる「水景棚」の一角に、白とピンクのかわいい睡蓮の花が代わる代わる咲き始めます。

画像提供:けいはんな記念公園
また、睡蓮の隣の水盤では7月下旬から蓮の花もお目見え。こちらは小さな区画でありますが、花の様子を間近で見られますよ。水景棚は沢飛石を歩いて渡ることができるので、水音や初夏の心地よい風を感じながら、睡蓮や蓮の花を満喫してくださいね。
<周辺立ち寄りスポット>
・国立国会図書館関西館
・スッカマ源氏の湯
■■INFORMATION■■
けいはんな記念公園
住所:京都府相楽郡精華町精華台6-1
TEL:0774-93-1200
開園時間:9:00〜17:00(16:30受付終了)
入園料:一般220円、65歳以上・小・中学生110円、未就学児無料
休園日:年末年始(ほか臨時休園あり)
駐車場:あり(普通500円/大型1700円)
※その他のアクセス方法は下記のアドレスからご確認ください。
https://keihanna-park.net/access/
HP:https://keihanna-park.net/
渡り鳥の飛来地&府内唯一のオニバスの自生地
【亀岡市】平の沢池
見頃:蓮 7月上旬〜8月上旬 / オニバス8月

画像提供:(一社)亀岡市観光協会
亀岡市にある「平の沢池」は、農業用溜め池として整備された上池、中池、下池の一部にハス池があり、それらを総称して平の沢池と呼ばれています。
下池の東側(平の沢交差点北東側)に蓮が密集しており、毎年7月から8月にかけては一面蓮の花づくしに。池を縦断する「水鳥のみち」からは迫力ある全景が眺められ、遊歩道に下りて間近で楽しむこともできますよ。

画像提供:(一社)亀岡市観光協会
また、下池では府内唯一、オニバスが自生していることでも有名なんです。
オニバスは絶滅が危惧されている水生植物で、赤紫色の花を咲かせ、全体が鋭く硬いトゲに覆われているのが特徴。オニバスは芽吹いても水温や風の状況によって咲かない年もあるので、花を見られたらラッキーかも?
■■INFORMATION■■
平の沢池
住所:京都府亀岡市馬路町
TEL:0771-22-0691(JR亀岡駅観光案内所)
時間:見学自由
駐車場:あり
京田辺市の2大蓮池をめぐる
【京田辺市】同志社前駅・興戸大池向かい
見頃: 蓮7月中旬〜8月中旬

画像提供:京田辺市観光協会
京田辺市のJR同志社前駅を出て、同志社大学方面を背に歩道橋を渡った先にある田畑の一角に蓮池があります。学生さんが多く通る道ですが、歩道橋の陰に隠れそうな位置にあるため穴場の蓮スポットなんです。

画像提供:京田辺市観光協会
また、歩道橋を上がれば上から眺めることもできますよ。駅チカなのでぜひ途中下車で訪れてみてください。

画像提供:京田辺市観光協会
さらに、同志社前駅と並ぶ京田辺の2大蓮池のひとつが「興戸大池向かい」の蓮池です。こちらは近鉄興戸駅から徒歩20分のところにある大きな池で、駐車場はないので徒歩がおすすめ。
京田辺市観光協会のHPでは、2大蓮池を巡るコースを紹介しているので、初夏のおでかけに巡ってみてはいかがでしょう。
<周辺立ち寄りスポット>
・酬恩庵一休寺
・伊賀越えの道(京田辺市編)
■■INFORMATION■■
同志社前駅
京田辺市三山木垣ノ内
TEL:0774-68-2801(京田辺市観光協会)
駐車場:なし
興戸大池
京田辺市興戸石峠103
TEL:0774-68-2801(京田辺市観光協会)
駐車場:なし
二千年の眠りから目覚めた奇跡の蓮
【宮津市】水生動植物公園 花蓮の里
見頃:睡蓮7月~8月/蓮7月下旬~8月

画像提供:宮津市役所
宮津市の日ヶ谷地区にある「水生動植物公園 花蓮(はなはす)の里」は、地元住民からなる「花蓮の里同好会」によって維持管理されている公園です。
園内には約15種類300株の睡蓮と、約35種類2000株の蓮が植えられており、遊歩道が整備されているので、花を間近で観賞することができますよ。

画像提供:宮津市役所
蓮池には、約二千年前の縄文時代の地層から発掘した蓮の花を開花させた「大賀ハス」も見ることができます。この蓮の希少価値は国際的にも認められており、“二千年の眠りから目覚めた生物の奇跡”と言われているのだそう。
毎年、見頃の時期には地元の人だけでなく京阪神から多くの人々が訪れます。今年は蓮の見頃に合わせて、音楽や地元グルメも楽しめる「観蓮会」が開かれる予定です。
◉観蓮会
日時:7月最終日曜日(予定)
内容:飲食コーナー、演奏会など(予定)
料金:入場無料
※小雨決行(荒天時は予告なく中止あり)
<周辺立ち寄りスポット>
・伊根の舟屋
■■INFORMATION■■
水生動植物公園 花蓮の里
住所:京都府宮津市日ヶ谷5126
TEL:0772-27-1911(花蓮の里同好会 土井さん)
時間:見学自由
駐車場:あり