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【端午の節句】源氏物語にも登場した薬玉(くすだま)を作って厄払い!

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薬玉

画像提供:おはりばこ(写真左)/渓斎英泉『十二ケ月の内 五月 くす玉』,蔦屋吉蔵. 国立国会図書館デジタルコ レクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1304720 (参照 2024-04-11)(写真右)

子どもの健やかな成長を祈って粽(ちまき)や柏餅を食べ、鯉のぼりや武者人形、菖蒲(しょうぶ)を飾る「端午の節句(たんごのせっく)」。実はこの風習は古く、平安時代の貴族たちもお祝いしたのだとか。
王朝人たちは一体どんな行事をしたのでしょう。今と同じようなことをしていたのでしょうか‥‥少しだけ紐解いてみましょう。
 

菖蒲や蓬の香りに包まれた、平安貴族たちの端午の節句

端午の節句

画像提供:京都市上京区役所

節は五月にしく月はなし。菖蒲、蓬などのかをりあひたる、いみじうをかし
— 節句は五月にまさる月はありません。菖蒲(しょうぶ)、蓬(よもぎ)などの香りが混ざりあっているのは大変趣深く、なんて素敵なことでしょう

これは『枕草子』の中の一節。平安時代に暮らした清少納言が、五節句(※)の中で一番、「端午の節句(たんごのせっく)」が素敵だといっています。
端午の節句は奈良時代に中国から伝わった行事です。「端午」とは月の初めの午の日のことだったのですが、「午(ゴ)」の音が「五(ゴ)」につながることから、55日に端午の節句が行われるようになったといわれています。
旧暦の55日頃はちょうど梅雨。じめじめとした気候で体調を壊しやすいので、医術や薬が発達していないこの時代、梅雨を無事に乗りきれるようにと、薬効があって香りが強く、魔除けの効果も持つ菖蒲や蓬の葉を身に付けたり、飾ったりしましました。
※五節句=1月7日の人日、3月3日の上巳、5月5日の端午、7月7日の七夕、9月9日の重陽の節句のこと。

端午の節句

画像提供:京都市上京区役所

内裏ではこの日、「端午の節会(せちえ=お祝いや宴)」が行われ、天皇や殿上人は菖蒲を冠に付けた菖蒲蔓(あやめのかずら)をかぶり、菖蒲酒(菖蒲の根や葉を浸したお酒)を飲んだり菖蒲湯に入ったり、また菖蒲と蓬の葉と併せて諸殿舎の屋根を葺いたりしました。
写真は、今も行われている菖蒲と蓬の葉で屋根を葺く「軒菖蒲」です。

画像:伊勢貞丈『貞丈雑記 4巻』[1],写. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2565150 (参照 2024-04-11)

さらに邪気を祓い、長寿を授けるお守りとして、香料を錦の布で包み、造花や菖蒲、蓬の葉で飾って五色の紐を垂らした「薬玉(くすだま)」が授けられたのだとか。それを柱に飾ったり、人々も美しい薬玉を作って贈り合ったりしたそうです。
『源氏物語』の「蛍の巻」には、美しい玉鬘の元にあちらこちらから薬玉が贈られるシーンが登場しますし、『枕草子』の中にも
「空が曇りがちの中、中宮様の御所などには色とりどりの糸を組み下げた御薬玉が縫殿寮(ぬいどのりょう)から献上され、御帳台が立ててある母屋の柱の左右につけてあります。九月九日の菊を生絹の布に包んで献上されたものが同じ柱に数か月結び付けてあり、それを薬玉に替えてから捨てるようです」
と記されています。
端午の節句のこの日、菖蒲や蓬に、お香の香りが混じりあい宮中はとても良い香りが漂っていたのでしょうね。

ちなみに当時、薬玉がどのような形だったか正確には分かっていないそうです。ただ、江戸時代後期の有職故実家・伊勢貞丈が記した『貞丈雑記(ていじょうざっき)』の中に薬玉の絵(写真)があり、江戸時代のことではありますが、55日にこのような薬玉が禁裏(江戸時代の内裏の呼び方)から将軍家に贈られてきたと記されています。

現代版・薬玉を作ってみよう!

薬玉

画像提供:おはりばこ

そのように邪気を払い、そして美しい薬玉なら私たちも家に飾ってみたくなりませんか?
京都市北区でつまみ細工の髪飾りや和雑貨を販売する「おはりばこ」では、自宅で作る「つまみ厄除薬玉キット」(税込6600円)を販売しています。
平安時代の薬玉がどのようなものだったのか分からないにせよ、現代に暮らす私たちにとって薬玉といえば、丸いこの形ですよね。
色合いは「伝統の厄除けカラー」「癒やされ5色カラー」「あかつきの紅白」の3種類あり、好みのものを選ぶことができます。

画像提供:おはりばこ

画像提供:おはりばこ

キットの中には、このようにすでにカットしてある生地、球、組紐などが入っていて、自分でピンセットや糊などを用意して作るようになっています(必要なものはキットに記載してあります)。

薬玉

画像提供:おはりばこ

とはいえ「こんな大作、説明書を見ながらひとりで作れるのだろうか…」と思った方、ご安心を。購入した方だけが見られるYouTubeの「つくり方動画」を見ながら作成するようになっていて、動画の中では細かなコツも解説しているそうですよ。

みんなの薬玉プロジェクト

北井さん

画像提供:おはりばこ

ところで、このキットができたのはコロナ禍が始まった2020年のこと。人と会うことが容易ではなくなったこの時、厄除けになり、無心に作れるものをと考案されました。
ですが、あまりに長く続くパンデミックに「やっぱり、みんなでできる何かがしたい。それならたくさんの人に参加してもらい大きな薬玉を作る “みんなの薬玉プロジェクト” をしようと考えたんです」と女将の北井香里さんがお話しくださいました。

つまみ細工

画像提供:おはりばこ

これは家にある布でつまみ細工の小さな花を作り、お店に送るというもの。色は古来より厄除けの色とされてきた赤色なら何でもOK。早速、SNS等で呼びかけたところ、なんと北海道から沖縄まで日本はもとより海外からも814名の方が参加。

画像提供:おはりばこ

画像提供:おはりばこ

それを職人さんが組み合わせ、直径105cm、上部の飾り紐と下部の吹流しを含めた全長315cmという大きな薬玉が完成。近くに鎮座する今宮神社へ奉納されました。
「この時は大きな薬玉を作りましたが、“薬玉を飾って厄払いをしている” という想いが生活の支えとなり、心穏やかに過ごせるのではないかなと思って。それはきっと平安時代の人も同じですよね。家で薬玉を作り、飾ることが心の救いになればと思っています」

今年の旧暦の端午の節句は63日だそうですよ。今から少しずつ作り、薬玉を飾ったり、誰かに贈ったりするのはいかがでしょう。

 ■■INFORMATION■■

おはりばこ 
京都府京都市北区紫野下門前町25(大徳寺門前)
TEL075-495-0119
10:0017:00
水曜定休
オンラインショップから購入できます

 

■■参考文献■■

『日本文学全集07』(河出書房新社)

■■参考サイト■■

東京都神社庁
有職造花師 大木素十 王朝の美 雅の世界 
京都文化博物館
風俗博物館
上京ふれあいネット カミング

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